2026/05/09追記:本ページで導出した式を用いて回路の各部の電流や電圧を計算するページを作成しました。
はじめに
高校物理では電気抵抗の抵抗値測定で用いられるホイートストンブリッジ1を学習しますが、検流計の内部抵抗を無視して議論されていました。
では、検流計の内部抵抗を考慮した場合は、検流計や各抵抗器に流れる電流はどうなるのでしょうか。
検流計の内部抵抗を考慮すると不平衡2なブリッジ回路は直並列回路(直列回路と並列回路の組み合わせ)ではなくなるため、Δ−Y 変換あるいはキルヒホッフの法則を使って計算する必要があります。
そこで、このページではキルヒホッフの法則の派生形である網目電流法(閉路電流法)を用いて、検流計の内部抵抗を含む抵抗ブリッジ回路を解析します。
回路方程式をクラメルの公式3を用いて解くことで、各部を流れる電流を導出し、回路の合成抵抗や平衡条件を求めます。
計算過程は省略せず記載したので、ぜひ紙と鉛筆を手に取って追跡してみてください。
問題
下図の回路について、以下の問いに答えよ。
(1) R0=0 のとき、抵抗 R1、R2、R3、R4、R5 を流れる電流 I1、I2、I3、I4、I5 と全電流 I0 を求めよ。
(2) R0=0 のとき、各抵抗を流れる電流 I0、I1、I2、I3、I4、I5 を求めよ。

解説
上の回路は一般的な抵抗ブリッジ回路です。
この回路をホイートストンブリッジとして利用する際、R0 と R5 はそれぞれ起電力 E0 の電源と検流計の内部抵抗に相当します。
(1) 電源の内部抵抗を無視した場合
この問題では問(1)の計算結果を問(2)で再利用することができるようになっています。
そこで、まずは R0=0 として解いていきます。
各部を流れる電流
ここからは各抵抗を流れる電流 I1、I2、I3、I4、I5 と全電流 I0 を求めます。
問題の回路は R5 の存在により直並列回路として解くことが不可能となっています。
そこで、少ない未知変数で各部の電流を求めることができる網目電流法を適用します。
この解説では、下図のように網目電流 Ia、Ib、Ic を設定します。

上図のように網目電流を定めると、求める各電流は網目電流を用いて以下のように表されます。
⎩⎨⎧I0I1I3I2I4I5=Ia=Ib=Ic=Ia−Ib=Ia−Ic=Ib−Ic
キルヒホッフ電圧則を Ia、Ib、Ic の各閉路に適用し、そこに上式を代入します。
Ia の閉路では
R3(Ia−Ib)+R4(Ia−Ic)∴(R2+R4)Ia−R2Ib−R4Ic=E0=E0
Ib の閉路では
R1Ib+R5(Ib−Ic)−R2(Ia−Ib)∴−R2Ia+(R1+R2+R5)Ib−R5Ic=0=0
Ic の閉路では
−R5(Ib−Ic)+R3Ic−R4(Ia−Ic)∴−R4Ia−R5Ib+(R3+R4+R5)Ic=0=0
各閉路の式をまとめると、以下の連立一次方程式が得られます。
R2+R4−R2−R4−R2R1+R2+R5−R5−R4−R5R3+R4+R5IaIbIc=E000
上の回路方程式の解をクラメルの公式によって求めていきます。
まずは共通の分母となる Δ の計算です。
Δ=R2+R4−R2−R4−R2R1+R2+R5−R5−R4−R5R3+R4+R5=R1R2(R4+R5)+R2R3(R1+R5)+R3R4(R2+R5)+R4R1(R3+R5)
行列式の計算過程を見る
Δ=R2+R4−R2−R4−R2R1+R2+R5−R5−R4−R5R3+R4+R5=0−R2−R4R1R1+R2+R5−R5R3−R5R3+R4+R5=0−R2−R4R1R2+R5−(R1+R5)R3−(R3+R5)R4+R5=R1R2(R4+R5)+R2R3(R1+R5)+R3R4(R2+R5)+R4R1(R3+R5)
- 1行目から2行目への変形は、行列式の1行目の各成分に、2行目と3行目の各成分の和を加えています。
- 2行目から3行目への変形は、行列式の2行目と3行目の各成分から、1行目の各成分を引いています。
(行列式の計算過程ここまで)
次に、各網目電流の値を求めていきます。
Ia=Δ1E000−R2R1+R2+R5−R5−R4−R5R3+R4+R5=Δ1E0{(R1+R2)(R3+R4)+R5(R1+R2+R3+R4)}
行列式の計算過程を見る
====E000−R2R1+R2+R5−R5−R4−R5R3+R4+R5E0R1+R2+R5−R5−R5R3+R4+R5E0R1+R2−R5R3+R4R3+R4+R5E0R1+R2−R5R1+R2+R3+R4R3+R4E0{(R1+R2)(R3+R4)+R5(R1+R2+R3+R4)}
- 1行目から2行目への変形は、行列式を1列目で展開しています。
- 2行目から3行目への変形は、行列式の1行目の各成分に、2行目の各成分を加えています。
- 3行目から4行目への変形は、行列式の2列目の各成分に、1列目の各成分を加えています。
(行列式の計算過程ここまで)
Ib=Δ1R2+R4−R2−R4E000−R4−R5R3+R4+R5=Δ1E0{R2(R3+R4)+R5(R2+R4)}
行列式の計算過程を見る
====R2+R4−R2−R4E000−R4−R5R3+R4+R5−E0−R2−R4−R5R3+R4+R5E0R2−R4R5R3+R4+R5E0R2−(R2+R4)R5R3+R4E0{R2(R3+R4)+R5(R2+R4)}
- 1行目から2行目への変形は、行列式を2列目で展開しています。
- 2行目から3行目への変形は、行列式の1行目の共通因数 −1 を抜き出しています。
- 3行目から4行目への変形は、行列式の2行目の各成分から、1行目の各成分を引いています。
(行列式の計算過程ここまで)
Ic=Δ1R2+R4−R2−R4−R2R1+R2+R5−R5E000=Δ1E0{R4(R1+R2)+R5(R2+R4)}
行列式の計算過程を見る
===R2+R4−R2−R4−R2R1+R2+R5−R5E000E0−R2−R4R1+R2+R5−R5E0−(R2+R4)−R4R1+R2−R5E0{R5(R2+R4)+R4(R1+R2)}
- 1行目から2行目への変形は、行列式を3列目で展開しています。
- 2行目から3行目への変形は、行列式の1行目の各成分に、2行目の各成分を加えています。
(行列式の計算過程ここまで)
最終的に、求める各電流の値は以下のようになります。
I0=Ia=R1R2(R4+R5)+R2R3(R1+R5)+R3R4(R2+R5)+R4R1(R3+R5)E0{(R1+R2)(R3+R4)+R5(R1+R2+R3+R4)}
I1=Ib=R1R2(R4+R5)+R2R3(R1+R5)+R3R4(R2+R5)+R4R1(R3+R5)E0{R2(R3+R4)+R5(R2+R4)}
I3=Ic=R1R2(R4+R5)+R2R3(R1+R5)+R3R4(R2+R5)+R4R1(R3+R5)E0{R4(R1+R2)+R5(R2+R4)}
I2=Ia−Ib=R1R2(R4+R5)+R2R3(R1+R5)+R3R4(R2+R5)+R4R1(R3+R5)E0{R1(R3+R4)+R5(R1+R3)}
I4=Ia−Ic=R1R2(R4+R5)+R2R3(R1+R5)+R3R4(R2+R5)+R4R1(R3+R5)E0{R3(R1+R2)+R5(R1+R3)}
I5=Ib−Ic=R1R2(R4+R5)+R2R3(R1+R5)+R3R4(R2+R5)+R4R1(R3+R5)E0(R2R3−R1R4)
ブリッジ回路の合成抵抗
問題文では指示されていませんが、せっかくなので回路の合成抵抗を求めてみます。
この回路の合成抵抗は全電流 I0 を用いて R=E0/I0 で求められます。
上で導出した I0 の式を代入すると、R は次式で表されます。
R=(R1+R2)(R3+R4)+R5(R1+R2+R3+R4)R1R2(R4+R5)+R2R3(R1+R5)+R3R4(R2+R5)+R4R1(R3+R5)
ブリッジ回路の平衡条件
抵抗 R5 に電流が流れない(I5=0 が成り立つ)とき、ブリッジ回路は平衡であるといいます。
上で導出した I5 の式より、ブリッジ回路が平衡のとき
R1R4=R2R3
が成立することが分かります。
これがブリッジ回路の平衡条件です。
(2) 電源の内部抵抗を考慮した場合
続いて電源の内部抵抗 R0 を考慮する問(2)に入ります。
各抵抗を流れる電流
電源の内部抵抗は R1、R2、R3、R4、R5 で構成されるブリッジ回路との直列接続なので、R0 を流れる電流は、上で計算した(R0 を考慮しない状態での)合成抵抗 R を利用して I0=E0/(R+R0) で求められます。
しかし、他の各抵抗を流れる電流を求めるには、回路方程式を改めて立てる必要があります。
電源の内部抵抗 R0 を考慮した場合、Ia の閉路についてキルヒホッフ電圧則より
R0Ia+R3(Ia−Ib)+R4(Ia−Ic)∴(R0+R2+R4)Ia−R2Ib−R4Ic=E0=E0
が成り立ちます。Ib と Ic の閉路について変更がないので、連立方程式は以下のようになります。
R0+R2+R4−R2−R4−R2R1+R2+R5−R5−R4−R5R3+R4+R5IaIbIc=E000
上式をこれまでと同様にクラメルの公式を用いて解きます。
Δ=R0+R2+R4−R2−R4−R2R1+R2+R5−R5−R4−R5R3+R4+R5=R0{(R1+R2)(R3+R4)+R5(R1+R2+R3+R4)}+R1R2(R4+R5)+R2R3(R1+R5)+R3R4(R2+R5)+R4R1(R3+R5)
行列式の計算過程を見る
Δ=R0+R2+R4−R2−R4−R2R1+R2+R5−R5−R4−R5R3+R4+R5=R0+R2+R40−R20−R4−R2R1+R2+R5−R5−R4−R5R3+R4+R5=Δ0R000−R2R1+R2+R5−R5−R4−R5R3+R4+R5+Δ1R2+R4−R2−R4−R2R1+R2+R5−R5−R4−R5R3+R4+R5
ここで、Δ1 は問(1)で計算した、電源の内部抵抗を考慮しないときの Δ と等しいので、以前の計算結果より
Δ1=R1R2(R4+R5)+R2R3(R1+R5)+R3R4(R2+R5)+R4R1(R3+R5)
また Δ0 は
Δ0=R000−R2R1+R2+R5−R5−R4−R5R3+R4+R5=R0R1+R2+R5−R5−R5R3+R4+R5=R0R1+R2+R5R1+R2−R5R3+R4=R0R1+R2R1+R2+R3+R4−R5R3+R4=R0{(R1+R2)(R3+R4)+R5(R1+R2+R3+R4)}
- 2行目から3行目への変形は、行列式の2行目の各成分に、1行目の各成分を加えています。
- 3行目から4行目への変形は、行列式の1列目の各成分に、2列目の各成分を加えています。
となります。
よって
Δ=Δ0+Δ1=R0{(R1+R2)(R3+R4)+R5(R1+R2+R3+R4)}+R1R2(R4+R5)+R2R3(R1+R5)+R3R4(R2+R5)+R4R1(R3+R5)
(行列式の計算過程ここまで)
各網目電流の値を計算します。
Ia は R0 を考慮しない場合と同様に
Ia=Δ1E000−R2R1+R2+R5−R5−R4−R5R3+R4+R5=Δ1E0{(R1+R2)(R3+R4)+R5(R1+R2+R3+R4)}
となります。
Ib、Ic も同様に、前に計算した結果を用いて
Ib===Δ1R0+R2+R4−R2−R4E000−R4−R5R3+R4+R5−Δ1E0−R2−R4−R5R3+R4+R5Δ1E0{R2(R3+R4)+R5(R2+R4)}
Ic===Δ1R0+R2+R4−R2−R4−R2R1+R2+R5−R5E000Δ1E0−R2−R4R1+R2+R5−R5Δ1E0{R4(R1+R2)+R5(R2+R4)}
となります。
以上より、電源の内部抵抗 R0 は網目電流の式のうち分母の Δ のみに作用することが分かります。
例として、R5 を流れる電流 I5 は以下の式で表されます。
I5=Ib−Ic=R1R2(R4+R5)+R2R3(R1+R5)+R3R4(R2+R5)+R4R1(R3+R5)+R0{(R1+R2)(R3+R4)+R5(R1+R2+R3+R4)}E0(R2R3−R1R4)
回路の合成抵抗
問(1)の結果を使えば、R0 を含めた回路の合成抵抗 R′ は
=R′=R+R0(R1+R2)(R3+R4)+R5(R1+R2+R3+R4)R1R2(R4+R5)+R2R3(R1+R5)+R3R4(R2+R5)+R4R1(R3+R5)+R0
で表されます。
一方、回路の合成抵抗は問(2)における I0 を用いて R′=E0/I0=E0/Ia で求めることができ、その値はもちろん上式と一致します。
おわりに
ここまで、不平衡な場合を含む一般的な抵抗ブリッジ回路を網目電流法で解きました。
物理的に電流が逆向きに流れないことが数式上でも分かるよう、各電流の式に減算記号が含まれない形で計算しています(I5 を除く)。
今回は抵抗値が未知のため、便利なクラメルの公式が利用できる網目電流法で解きました。
抵抗値が既知の場合は Δ−Y 変換の方が速く解けると思います。
また、今回の回路は抵抗のみで構成された直流回路でしたが、抵抗をインピーダンスに置換すればマクスウェルブリッジを始めとした交流ブリッジ回路に拡張されます。
回路図のソースコード
回路図は CircuiTikZ を用いて LATEX で作成しています。
ソースコードは以下のとおりです。
Source (bridge.tex)
% Resistor bridge w/ loop current
\documentclass[border=3mm]{standalone}
\usepackage{tikz}
\usepackage{circuitikz}
\usepackage{newtxtext,newtxmath}
\usepackage{mathrsfs} % \mathscr (include after newtxmath)
\pagecolor{white}
\begin{document}
\begin{tikzpicture}
\draw(0,0)
to[european resistor, f>^=$I_1$] ++(3,2) % R_1
to[european resistor, f=$I_3$] +(3,-2); % R_3
\draw(0,0)
to[european resistor, f_>=$I_2$] ++(3,-2) % R_2
to[european resistor, f>_=$I_4$] ++(3,2); % R_4
\draw(3,2)
to[european resistor=$R_5$, f>_=$I_5$, *-*] +(0,-4);
\draw(0,0)
to[short, *-] ++(0,-3.5)
to[short, f<=$I_0$] ++(1.5,0)
to[battery2, l_=$\mathscr{E}_0$] ++(1.5,0)
to[european resistor] ++(2,0) % R_0
to[short] ++(1,0)
to[short, -*] ++(0,3.5);
\node at (1.2,1.5) {$R_1$};
\node at (4.8,1.5) {$R_3$};
\node at (1.2,-1.5) {$R_2$};
\node at (4.8,-1.5) {$R_4$};
\node at (4,-4) {$R_0$};
%%% [BEGIN] Loop current %%%
\node[blue] at (3,-2.65) {$I_\mathrm{a}$};
\draw[blue, latex-] (1.1,-2.7) arc[x radius=2, y radius=0.2, start angle=200, delta angle=320];
\node[blue] at (1.8,0) {$I_\mathrm{b}$};
\draw[blue, latex-] (1.3,-0.2) arc[x radius=0.5, y radius=0.5, start angle=200, delta angle=320];
\node[blue] at (4.3,0) {$I_\mathrm{c}$};
\draw[blue, latex-] (4.05,-0.45) arc[x radius=0.5, y radius=0.5, start angle=240, delta angle=320];
%%% [END] Loop current %%%
\end{tikzpicture}
\end{document}