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断想

9月で終了したNHKRJの中東向け臨時送信について

はじめに

NHKが9月28日付で発表したプレスリリース1によると、イラン情勢を受けて2026年3月1日に開始されたNHKワールド・ラジオ日本(NHKRJ)の短波による中東向け臨時送信は9月30日(時刻不明)をもって終了し、10月1日以降は定時枠(1日のうち3時間50分の通常放送)のみで放送しているとのことです。

臨時送信の終了理由については「5月以降のイランでのインターネット通信の回復、6月の外務省による中東湾岸地域7か国の危険レベルの一部引き下げなど」と説明されています。

放送スケジュールや送信所等、臨時送信の体制の経過については臨時送信開始についての記事の中で随時追記してきましたが、3月に24時間体制で始まった臨時送信は7月以降段階的に縮小し、8月以降八俣送信所からの送信は定時枠を除いて行われなくなっていました。

NHKRJの臨時送信は2014年のタイ向け臨時送信以来と思われますが、タイ向け臨時送信は1か月にも満たない期間(2014年5月23日から6月18日まで2)だったのに対して、中東向け臨時送信は7か月にわたり続けられました。

10月1日以降の中東向けの放送スケジュール(中東・北アフリカ向け定時枠)は下表の通りです。 各局の放送スケジュールのページも更新しています。

日本時間 (JST)八俣送信所 (kHz)
02:00-04:0012060
07:00-08:5017800

ただし、A26シーズンの終了により、このスケジュールは10月26日放送分から変更される見込みです。

臨時送信の振り返り

7か月間の臨時送信をハード面(短波送信)とソフト面(編成)の両面で振り返ります。 内容は個人の感想です。

ソフト面

まずソフト面についてです。

今回の臨時送信に伴い、編成面では2023年3月26日に終了3した「海外安全情報」を復活し、日本の外務省が発出している中東地域の危険レベルなどをアナウンスしていました。 さらに、臨時送信を実施中の時間帯には数時間おきに、時間帯別の周波数を放送していました。

しかし、それらの放送は基本的に地域放送局からのニュース等を放送している正時前の1~5分間に行われるだけであり、それ以外の放送時間は平常時と同様の国内向け放送「NHK AM」のサイマル放送を行っていました。 国際放送独自の番組が放送時間の1割にも満たない状態は7か月間変わらなかったようです。

NHK AMでは毎正時から定時ニュースを放送しているため、国内と同等の最新ニュースを届けることが可能ですが、そもそも国内向けの内容のため必ずイラン情勢が取り上げられるわけではありません。

少し昔の話ですが、2017年度までNHKRJでは国際放送独自のニュース番組が1日3回編成されていました4。 このニュースは予め収録した内容を繰り返し放送する「海外安全情報」とは異なり生放送だったため、国内外の最新情報を在外邦人向けに構成して伝えることができていました。

当時の雰囲気をかすかに記憶している筆者としては、今回の中東向け臨時送信では国際独自のニュースを復活させ、臨時送信の冒頭からせめて5分くらいは必ず中東情勢専門のニュースを報じるような編成を計画してほしかったです。 3月上旬、臨時送信開始のニュースをNHKのテレビやラジオで耳にした視聴者の多くは、そうした内容の放送を期待したのではないでしょうか。 実際、ネット上では放送を聴取したと思われる人からの書き込みで、(AMの帯番組の)呑気な話題を流している場合なのかという声も見られました。

今や完全に国内向けAM放送のサイマルと化しているNHKRJ5にとっては難しい要望と思えてしまうのが悲しいです。

ハード面

次にハード面です。

イラン情勢は未だ膠着状態が続く中での終了ではありますが、海外中継所とも連携しながら半年以上も臨時送信が継続可能とは思いませんでした。

日常生活においては放送から配信へのシフトが進んでいることは明らかですが、インターネットが遮断される有事の際の短波放送の役割を改めて感じる機会となりました。

一方で、臨時送信開始初日から、海外安全情報や周波数案内を放送していた正時前の5分間に停波する現象が問題となりました。

臨時送信のために制作した番組が送信機の運用の都合で送出できないのは何とももどかしいと感じました。 筆者はこの問題の結末を追うことはできなかったのですが、八俣送信所の電波は自動制御6で非常に安定していることもあり、ソフト面(編成)とも連動しつつこうした問題が解決できるようになればと思いました。

おわりに

お読みいただきありがとうございました。 皆さんは7か月間の臨時送信についてどのような感想をお持ちになったでしょうか。

僭越ながら色々課題も挙げましたが、臨時送信を7か月も、しかもそのうち4か月間は24時間体制で継続してきたことは凄いことだと思っています。

関係者のみなさまにおかれましては大変お疲れさまでした。

脚注

  1. NHKラジオ国際放送の中東向け臨時送信終了について、NHKホームページ、2026年9月28日 ↩

  2. NHKラジオ国際放送のタイ向け臨時送信終了について、NHK国際放送局、外務省ホームページ、2014年6月12日 ↩

  3. 海外安全情報、NHKホームページ、2026年10月3日閲覧 ↩

  4. NHK年鑑2018、NHK放送文化研究所ホームページ、2018年10月30日発行。日本時間で11時と13時から10分間、18時から15分間(土曜日と日曜日は11時から5分間、13時と16時から10分間)放送されたニュースは、国内向けラジオ第1放送(当時)とは別のNHKRJ独自の内容であった。 ↩

  5. 「2026年度(令和8年度)後半期放送番組時刻表」より「2026年度 NHKワールド・ラジオ日本 放送番組時刻表」、国際放送局、NHKホームページ、2026年10月3日閲覧。一部曜日・一部時間帯を除き正時前1分間に放送されている「おしらせ」はAIアナウンスで次の時間の放送周波数を告知する内容で、これが唯一の国際独自番組となっている。 ↩

  6. 広大なカーテンアンテナから世界に安心を 日本唯一の『短波』国際放送送信所、KDDIホームページ、2017年11月28日 ↩