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断想

いつも朝鮮の声放送の邦題を使う理由

はじめに

本サイト「Udungpul」の朝鮮音楽の記事でも、YouTubeチャンネル「99mL」の投稿動画でも、私は日本語の曲名として朝鮮の声放送(VOK=Voice of Korea)で使用される邦題を使用しています。 これはYouTubeチャンネル開設時から変わりません。

短波放送で聴いたこともホームページで見たこともない一部の曲は仕方なく自分で訳すこともありますが、VOKでアナウンスされる曲名でない場合は中かっこの中に表記するように意識しています1

私がVOKの邦題を使い始めたそもそもの目的は、他のリスナーがすぐに曲を見つけ、原題と音源にたどり着けるようにするためでした。

ですが今では別の思いもあります。それは「標準としてのVOK邦題」という考え方です。

「標準としてのVOK邦題」

つまり、JIS規格に準拠して製図するように、日本語の曲名をなるべくVOKの邦題に準拠しようというスタンスです。 (これはただの個人的なこだわりであって、本記事をお読みいただいている方々に押し付ける意図はありません。)

外国の音楽は訳者によって邦題が微妙に違うので、結局原語で書かないとどの曲なのか分からないことがあります。

朝鮮音楽には同名異曲の歌もあり、歌い出しや声楽演奏形式を併記しなければ楽曲が特定できないものもあります。

このような時に役に立つのがVOKでアナウンスされている邦題です。

VOKの邦題は基本的に重複しないようになっているため、日本語曲名だけでどの曲なのか特定できます2

とはいえ、VOKの邦題を真に標準としようとすると、いくつか課題があります。

原題からかけ離れた意訳がある

一部の曲はアクロバティックに意訳されていたり、曲名ではなく歌詞を訳して邦題としていることがあります。 パッと思いついたものを以下に挙げます。

  • 《내 나라 제일로 좋아》(「ピョンヤンが一番だ」)
    • 普通に訳せば「私の国が一番良い」のようになりますが、曲名にも歌詞にもないピョンヤンがなぜか邦題に使われています。VOK七不思議の一つに入りそうなくらい謎です。
  • 《간절한 소원》(「願いはひとつ」)
    • 2024年12月に《불타는 소원》(直訳すれば「燃える願い」)から朝鮮語曲名が変更される前から「願いはひとつ」という邦題を使っています。
    • このフレーズは歌詞から採ってきたものと思われます。
  • 《내 운명 지켜준 어머니당이여》(「この身守る母のよう」)
    • 直訳すれば「私の運命を守ってくれる母なる党よ」となります。
    • 日本語としての自然さを優先したのかもしれませんが、労働党を歌う歌であることが分かりにくいです。

変わることがある

VOKの日本語曲名は《세상에 부럼없어라》(「われら幸せ歌う」)のように古くから変わることなく親しまれているものもありますが、ごく一部の曲の曲名は変わることがあります。

VOK聴取歴10余年の中でそうした曲は数えるほどしか知りませんが、放送を継続して聴取しないと古い邦題を使い続けてしまうリスクがあります(自戒)。

似た名前の新曲が出たときに…

上述したようにVOKの邦題は重複を避けているため、新曲の登場に合わせて似た名前の別の曲の邦題が変わることがあります。

  • 《간절한 마음》(「切なる思い」)のVOKの日本語曲名はかつて「熱い思い」でしたが、2017年に《뜨거운 념원》(「熱い思い」)が出たときに現行の「切なる思い」に変わりました。
  • 《언제나 함께 있어》(「いつも共に」)のVOKの日本語曲名はかつて「いつもそばに」でしたが、2019年に《언제나 그이곁에》(「いつもそばに」)が出たことで現行の「いつも共に」に変わりました。

特にきっかけがなくても…

VOKの邦題が変わるのは、似た名前の新曲が出たときに限りません。

  • 우리김정은동지》(「われらの金正恩同志」)は以前は「われらの金正恩元帥」だったのが、いつの間にか直訳の「~同志」に変わっていました。
  • 《공격전이다》(「攻撃戦だ」)はかつて「攻撃の勢いで」という曲名でアナウンスされていましたが、現在ではより直訳かつ一般的な「攻撃戦だ」に変わっています3

表記揺れが生じる

多くの邦題を短波放送からの聞き書きで取得しているため、どうしても表記揺れが生じます。

よくあるのが、「私」と「わたし」、「一つ」と「ひとつ」など、漢字とひらがなの表記がバラバラになるタイプの表記揺れです。

VOKのホームページですら表記揺れがよくあるので、こればかりは無理に統一しても仕方ない気がします。

おわりに

いくつか課題を挙げましたが、1950年に始まった朝鮮の声日本語放送の歴史は長く、朝鮮中央放送委員会の対外放送という権威もあります。

短波放送からのめり込んだ朝鮮音楽愛好家のため、これからも積極的にVOKの邦題を使っていきたいと思います。

脚注

  1. 最近のYouTubeへの投稿では《축배를 들자》(祝杯を上げよう)、《사랑의 힘은 얼마나 강한가》(愛の力はどれほど強いのか)などが該当します。古い投稿でこの中かっこのルールが守られていないかもしれませんが、発見次第修正します。

  2. 歌詞も旋律も違う《어머니》という曲がありますが、VOKの邦題では「オモニ」と「大事なお母さん」のように異なる曲名でアナウンスされるため、この邦題だけでどちらの歌か区別することが可能です。

  3. 先軍時代が完全に過去のものとなった今、この歌が朝鮮中央放送で流されることは皆無ですが、朝鮮の声日本語放送ではリスナーのリクエストに応える「お望み音楽」の時間(隔週木曜日の17時台に初回放送)でしばしば流されています。邦題の変更がネット文化の影響を受けたものかは定かではありません。