北朝鮮の年越し放送の変遷(2018~2025年)
Youtubeチャンネル「99mL」には2018年以降、毎年年越し時の朝鮮中央放送の放送内容を録音した受信音声を投稿しています。
2018年までは年越し時の特別放送のメインは金日成広場からの祝砲発射の実況中継でしたが、2019年からは同じ金日成広場での迎春公演を放送するようになり、生中継の時間が大幅に増加しました。
しかし、迎春公演が金正恩総書記の参加する「1号行事」としてメーデースタジアムで行われるようになった2023年以降、年越し放送は実況中継が一切ない簡素な内容となっています。
ここからは各年の放送内容と編成面でのポイントを、投稿動画とともに簡単に紹介します。 各動画の概要欄を切り貼りして作ったので、曲名の表記言語が統一されていないことをご了承ください。
2017→2018 祝砲発射
金日成広場で開催された祝砲発射(花火)の実況中継が実施されました。
2018→2019 迎春公演
金日成広場で開催された「2019年ソルマジ祝賀舞台」の実況中継が実施されました。
1時間半を超えて続いた長時間の中継放送でした。
- ラジオ
- 23時から公演終了まで平壌放送と朝鮮中央放送がサイマル。
- 「忠誠の心」は朝鮮中央放送では25時30分頃から放送した。平壌放送と同じ時間に流すのは異例。
2019→2020 迎春公演
金日成広場で開催された「2020年ソルマジ祝賀公演」の実況中継が実施されました。
2019年の迎春公演より長い、2時間弱にも及ぶ中継放送でした。
- ラジオ
- 2019年と同様、23時から平壌放送と朝鮮中央放送がサイマル。
- 2019年と同様、「忠誠の心」は朝鮮中央放送では25時30分頃から放送した。平壌放送と同じ時間に流すのは異例。
- 録音実況は1日18時から放送しているのを確認した。
2020→2021 新年慶祝公演+国旗掲揚式・祝砲発射
金日成広場で開催された「2021年新年慶祝公演」と、国旗掲揚式・祝砲発射の実況中継が実施されました。
公演の冒頭部分の23時06分26秒から、ラジオでは「モランボン電子楽団(旧モランボン楽団)の出演」という実況がありました1。
YouTubeでは公演の部分のみを投稿しています。
2021→2022 新年慶祝公演+国旗掲揚式・祝砲発射
金日成広場で開催された「2022年新年慶祝公演」と、国旗掲揚式・祝砲発射の実況中継が実施されました。
YouTubeでは公演の部分のみを投稿しています。
国旗掲揚式のテレビ中継で、ポールに絡まった国旗が映されてしまう場面がありました。
- テレビ
- 中継前は《조국이여 말해다오》, 《내 마음 즐거워라》の画面音楽と時間調整空撮映像(BGM《내가 지켜선 조국》)が放送された
- 公演中継終了後は吹奏楽《조국찬가》の画面音楽と時間調整空撮映像(BGMはバイオリン合奏《나는 생각해》, ポチョンボ電子楽団の舞踏曲《지새지 말아다오 평양의 밤아》)が放送された
- 国旗掲揚式と祝砲発射の後は功労国家合唱団の《희망넘친 나의 조국아》の画面音楽に次いで放送員の挨拶、《수령님과 장군님은 함께 계시네》, 《인민의 축원》の画面音楽が流れてクロージングとなった
- モランボン楽団の《불타는 소원》などは流れなかった
2022→2023 中継実施無し(当日に中止か)
年越しに際して、「2023年新年慶祝大公演」が1号行事としてメーデースタジアムで開催されましたが、実況中継はありませんでした。
年越しの瞬間に実況中継を実施しなかったのは2016年以来7年ぶりのことです。
朝鮮中央放送では除夜の鐘の音、不滅の革命賛歌3曲、新年の挨拶が順に放送されました。
朝鮮中央放送の正午前時点の放送順序で「国旗掲揚式と祝砲発射」の実況中継が予告されていたにもかかわらず、実際には放送されなかったことから、何らかの理由で中継が急遽中止されたものと考えられます。
- ラジオ
- 「愛国歌」が放送されなかった
- 2023年新年慶祝大公演では冒頭で斉唱している
- 公演を冒頭から中継する予定だった可能性
- 2023年新年慶祝大公演では冒頭で斉唱している
- 「忠誠の心」が24時台ではなく25時台に流れた
- 2020年のように24時台にも公演の中継を実施する予定だった可能性
- 「愛国歌」が放送されなかった
2023→2024 中継実施無し
年越しに際して、「2024年新年慶祝大公演」が1号行事としてメーデースタジアムで開催されましたが、実況中継はありませんでした。
朝鮮中央放送では除夜の鐘の音、新年の挨拶、愛国歌、不滅の革命賛歌3曲が順に放送されました。
「三千里問題」(詳しくはこちら)の始まる直前の時期であり、国歌や不滅の革命賛歌はまだ合唱から差し替えられていません。
2024→2025 中継実施無し
年越しに際して、「新年慶祝公演」が1号行事としてメーデースタジアムで開催されましたが、実況中継はありませんでした。
2024年1月に三千里問題によって国歌や不滅の革命賛歌などの差し替え措置が始まって以降初めての年越しで、2024年10月にチュチェ暦(主体暦)が廃止されて以降初でもあります。
除夜の鐘の音、新年の挨拶、朝鮮民主主義人民共和国国歌、不滅の革命賛歌(三千里問題の差し替え対象となっている金正恩将軍賛歌を除く)が順に放送されました。
まとめ
2018年から2025年までの年越し放送の内容を簡単にまとめました。
過去には会場の悪天候のため(年越しに限らず)祝砲発射の実況中継が実施されないことはありましたが、2023年以降は天候に関わらず中継を実施しない形で固定化されています。
近年の豪華な公演も楽しみではありますが、私としては年越しの瞬間を朝鮮人民と共有できる実況中継が再び実現されることを願っています。